診療科・部門

消化器内科

概要

主に肝臓、胆嚢・胆管、膵臓、消化管(食道・胃・十二指腸・大腸)の疾患を扱っています。これらの臓器の役割は、身体に必要な栄養分を吸収するため、食物が消化管を通り、消化し、不要な物質を排泄することです。肝臓は代謝、排出、解毒、体液の恒常性の維持などの役割を担っており、肝臓で作られた胆汁(脂肪を消化する働きをもつ)がいったん胆嚢に溜まり、食後に胆管を通って十二指腸まで流れます。膵臓では食べ物を消化する酵素が作られています。

特色

当科の外来では当日の朝食の摂取がなければ、多くの場合当日中に検査を実施し、結果をお伝えすることが可能です。血液・尿検査や腹部エコー検査、胃内視鏡検査、S状結腸内視鏡検査などを実施し、適切な治療を開始することができます。お腹の症状で当科を受診される際には、朝食を摂らずに来院をお願いします。

主な対象疾患

肝臓の疾患(B型肝炎、C型肝炎、アルコール性肝炎、単純性脂肪肝/MAFLD:Metabolic dysfunction-associated fatty liver disease、肝臓がん)、胆嚢・胆管・膵臓の疾患(胆石症、膵炎、胆嚢がん、胆管がん、膵臓がん)

肝臓(B型肝炎、C型肝炎、アルコール性肝炎、単純性脂肪肝/MAFLD:Metabolic dysfunction-associated fatty liver disease、肝臓がん)
慢性肝炎は自覚症状に乏しく、健診などで血液検査を受けて初めて見つかることが多い病気です。さまざまな原因が挙げられますが、B型の場合は母親からの垂直感染(生まれてくる時にかかる)が多く、C型の場合は輸血や針治療、予防接種、刺青(いれずみ)などが挙げられます。また最近は、メタボリックシンドロームに関連した肝疾患(MAFLD:これまで主にNAFLDと呼ばれていました)やそれに伴う肝臓がんが増加しています。慢性肝炎は、一定の頻度で肝硬変や肝臓がんに進行するため治療や経過観察が必要です。 近年、肝臓病の治療は目まぐるしいほどの進歩を遂げ、以前は不治の病と考えられていたC型肝炎ではほとんどの患者さんが根治する時代になっています。一方で、食生活など生活習慣の変化に伴いMAFLDの患者は増加しています。肝臓は沈黙の臓器と呼ばれ、ぎりぎりまで無症状で持ちこたえるため、症状出現時には手遅れになることが多い臓器です。健診などで定期的なチェックを受け、肝機能異常や肝腫瘤などを指摘された場合には早いうちに当科を受診することをおすすめします。


胆石症
胆石症とは、胆嚢や胆管に結石ができたものです。胆石のできる場所によって症状や緊急度は変わりますが、突然の激しい痛みや腹痛、発熱を起こすこともあります。胆のう結石は無症状が多く、検査などで見つかった場合は経過観察となっている場合が多いです。胆管結石では胆汁の流れが悪くなるため、強い症状(腹痛、黄疸、肝臓障害)が起き、また、急性胆管炎や急性膵炎などの原因となることがあります。脂質の多い食事により結石ができやすくなると言われています。


膵炎
何らかの原因で膵臓の慢性的な炎症が続くことで、本来は食べ物の消化を助ける膵酵素が持続的に活性化され、ゆっくりと自身の膵臓を溶かしてしまう病気です。膵炎には急性膵炎と慢性膵炎があり、アルコール摂取や胆管結石などが原因となります。急性膵炎の代表的な初期症状として、腹痛が挙げられます。その後時間が経過すると、みぞおち部分を中心に刺すような痛みと表現される症状が出現したり、背部まで痛みが広がることがあります。重症化すると、胸水や腹水、意識障害や呼吸困難など命に関わる症状となることがあります。


胆嚢がん
胆嚢がんは袋状の臓器の内部に腫瘍ができるため、小さいうちは症状が出にくく、早期発見が難しいと言われています。胆嚢の出口近くにがんができた場合には、胆嚢炎を併発し、右のわき腹の痛みや発熱の症状があります。また、がんが大きくなって総胆管が閉塞すると胆汁が腸に流れなくなり、黄疸という症状が出現します。早期発見が大変重要な病気です。


胆管がん
胆管がんは、胆汁の通り道である胆管の粘膜上皮にできるがんの総称であり、発生する部位により、肝内胆管がん、肝門部胆管がん、肝外胆管がんに分類されます。肝臓で作られる胆汁が、胆管がんによって流れなくなると、黄疸が出現します。また、その他の症状として、腹痛や体重減少、食欲不振、便の色がクリーム色になることもあります。


膵臓がん
膵臓は胃の後ろで体の奥に位置しているため、膵臓がんになっていても自覚症状が現れにくく、早期発見が難しい病気です。さらに、膵臓がんは早い段階から周囲の組織や臓器を破壊していくため、進行が早く、腹痛や背中の痛みなどの症状が出現して検査を受けた段階ではすでにかなり進行しているケースも少なくありません。膵臓がんのリスク因子は喫煙習慣や肥満、遺伝、慢性膵炎や糖尿病などと言われています。


胃・十二指腸潰瘍
胃・十二指腸潰瘍はそれぞれの壁に傷がついている状態を指します。いずれも症状は、腹痛、もたれ、吐血・下血、出血による貧血などが挙げられ、原因はピロリ菌やNSAIDsと呼ばれる痛み止めの薬の服用、ストレスなどが挙げられます。潰瘍の程度が進行すると壁に穴があく穿孔に至ることもあります。


食道・胃静脈瘤
静脈瘤は食道や胃の血管がでこぼこに膨らんで、蛇行し、こぶのようになった状態を指します。静脈瘤は消化管から吸収した栄養分などを肝臓に送る輸送路である「門脈」にかかる圧(門脈圧)が上昇することで起こります。肝硬変などの慢性の肝臓病により、肝臓に血液が運ばれなくなることが原因と言われています。胃・食道の静脈瘤ともに自覚症状はありません。しかし、静脈瘤が進行すると、こぶが破裂して大量出血する危険があります。


ポリープ
ポリープとは、臓器の内側にある粘膜層の一部がイボのように隆起してできたものを指します。消化器系であれば、大腸ポリープと胃ポリープなどが挙げられます。一般的にポリープは良性の場合が多いのですが、がん化する場合があり、治療が必要になる場合もあります。大腸ポリープは無症状である場合が多く、胃ポリープは胃もたれや不快感、食欲不振などの症状がみられることがありますが、多くは同時に発症している慢性胃炎によるものと考えられます。


潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は大腸に慢性炎症が生じ、びらんや潰瘍を形成する原因不明の病気です。病変部位は直腸から始まり、連続性に大腸全体まで広がることがあります(連続性病変)。症状は粘血・血便、腹痛が持続的または反復して起こります。症状が良くなる寛解(かんかい)と、悪くなる再燃を繰り返すことが特徴です。発症頻度は10万人に100人程度とされている指定難病であり、発症に男女差はなく、20代頃の比較的若い世代から高齢者まで幅広い年代で発症する可能性があります。


クローン病
クローン病は主に小腸や大腸の粘膜に炎症が現れ、潰瘍や浮腫、狭窄が起こる原因不明の病気です。症状は腹痛、血便、下痢、体重減少などが代表的ですが、消化管である口の中から肛門までさまざまな部位に炎症が現れる可能性があります。発症率は10万人に27人程度とされており、指定難病です。10~20歳代で発症するケースが多く、男性のほうが女性より2倍程度発症しやすいことも特徴と言えます。

治療について

B型肝炎
B型肝炎の治療はウイルスの増殖を抑える核酸アナログ製剤が主となっています。最近用いられているものはエンテカビルやテノホビルといった薬剤で、比較的副作用の少ない飲み薬です。核酸アナログ製剤の内服によってウイルスを抑えることで肝臓がんの発生する確率を下げ、肝硬変の進展を抑制することができるため、必要な患者さんはきちんと内服治療を受けることが重要です。治療適応の決定は、主にウイルスの量、肝臓の血液検査データ(トランスアミナーゼ値)、肝硬変か否かによって行います。内服の必要の無い患者さんは、半年から1年に1回の定期検査(血液検査やエコー)が必要となります。


C型肝炎
C型肝炎の治療は、従来インターフェロンという注射の治療が中心でしたが、現在は直接型抗ウイルス薬(direct acting antivirals:DAAs)の内服で治療を行います。肝機能の保たれている患者さんには主にソフォスブビル/レジパスビル(ハーボニー®)、グレカプレビル/ピブレンタスビル(マヴィレット®)、肝機能不良の患者さんにはソフォスブビル/ベルパタスビル(エプクルーサ®)を使用します。これらの治療は副作用が少なく、再治療など特定の状況を除けば治る確率が非常に高く(98%以上)、通常の治療であれば2~3ヵ月で終了します。C型肝炎は、放置すると肝硬変や肝臓がんに進行し生命を脅かす病気です。簡単に治る時代となりましたので、一生に一度はウイルス肝炎健診を受けて、C型肝炎とわかれば速やかに治療を開始しましょう。


脂肪肝/MAFLD
食生活の欧米化などに伴い、アルコール摂取の多くない患者さんでも脂肪肝、さらにはメタボリックシンドローム(肥満、糖尿病、脂質異常等)に伴う慢性肝疾患(MAFLD)に罹患し、肝硬変や肝がんに進展するケースが増加しています。MAFLDからの発がんは、必ずしもすでに分かっている肝硬変など重い肝疾患からの発がんではなく、発がんの可能性がある患者さんの裾野は非常に広いため、消化器内科以外の医師も含めた日常診療を行われている先生方との連携が非常に重要となります。診断のされていないMAFLD疑いの患者さんは一度当院にご紹介いただき、肝臓がんや肝硬変の合併の有無を精査の上、高リスクの患者さんは当院でフォローし、低リスクの患者さんはかかりつけの医療機関で定期的に腹部エコー検査などを行っていただくことをお勧めします。そのフォロー中に、発がんが疑われた際には再度ご紹介により当院を受診していただくことでしっかりとかかりつけ医療機関と連携を行います。


肝臓がん
肝細胞がんの標準治療として、主に、肝切除、ラジオ波焼灼療法(RFA)、肝動脈化学塞栓術(TACE)、全身化学療法があります。患者さんの病期や肝機能によって治療法を選択します。肝細胞がんは他のがんと大きく異なり、がんの根治のみでは長期生存が得られません。肝臓の他の部位からの再発が起きうること、肝硬変や腫瘍の進行、治療の影響で肝機能が低下することが特徴だからです。当院ではがん専門施設と異なる特徴として、消化器内科医・肝臓専門医の管理の下で、腹水や食道胃静脈瘤の治療など、がん以外の合併症の治療や肝臓の予備力を保つための管理(内服治療)を行いながら総合的な治療を行うことができます。 RFAは当科では日本で最も早い時期(1999年6月)から導入し、多くの患者さんに実施してきました。RFAとは、針を皮膚から肝臓に刺して、肝臓がんを焼灼(熱凝固)する治療法です。入院期間は4~10日で、治療後はすぐに食事もでき、翌日には歩いて生活できます。肝切除より治療範囲は狭いですが、大きな腫瘍でなければ根治性も大きくは劣らず、体力や肝機能への負担も小さいので繰り返し治療が行えるメリットがあります。 TACEは主に肝臓の腫瘍の数が4個以上になった患者さんに行う治療です。RFAよりはやや進行した患者さんに行う治療ではあり根治性は劣りますが、当院では血管造影下で撮影したCT画像を再構成した肝動脈の3D画像をもとにできるだけ根治性が高く肝機能に優しい、選択的~超選択的なTACEを心がけています。以前に比べ化学療法が進歩したため適応は狭くなっていますが、適切に行えば抗がん剤内服に比べ継続的な副作用がなく根治性を高めながら生活の質を保つことができる治療です。 肝がんの化学療法はマルチキナーゼ阻害薬による治療が非常に進歩しており、現在一次治療ではソラフェニブ、レンバチニブが、二次治療以降ではレゴラフェニブやラムシルマブなどの薬剤が使用できるようになっています。進行ステージのがんのみならず、TACEを繰り返しすぎずに化学療法に移行することで肝機能を保ちながらの治療が行えるようになってきています。また、今後の治療としては免疫チェックポイント阻害薬などとの併用レジメンなど有望な治療が使用できるようになる可能性があり期待される分野です。


胆石症
無症状であれば原則的には腹部超音波検査などによる経過観察を行います。胆石発作や急性胆嚢炎などの強い症状が生じた場合は、薬物治療や、体の外から胆嚢にチューブを通して炎症で汚れてしまった胆汁を排出させる経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)という治療を行います。外科と連携して手術を検討することもあります。胆管結石症では急性胆管炎や急性膵炎という病気の原因となることがあり重症化すると命を落とすこともある病気です。したがって、胆管結石と診断されると治療が必要となります。当科では内視鏡を用いた治療を積極的に行っています。乳頭切開術(EPT=胆汁の出口である十二指腸乳頭を切り広げて胆石が排出できるようにする)や胆管ドレナージ・ステント留置(胆汁を排出させるためのチューブを留置する)、砕石・採石術(結石を砕いて胆管から取り出す)などの治療を組み合わせて行います。患者さんの状態によっては腹部超音波で見ながら体の外から胆管にチューブを挿入する経皮経肝胆道ドレナージ(PTCD)を行って、胆汁を排出させる治療をすることもあります。


膵炎
基本的に絶飲・絶食をして点滴による水分補給を行いつつ、消炎鎮痛剤を使用して痛みを取り除く治療を行います。重症化した場合は、集中治療室で厳重に管理するとともに、持続的血液濾過透析という血液浄化療法や薬を動脈から注入する持続動注療法を併用することにより症状の改善、生存率の向上を図っています。また、膵炎の合併症に膵嚢胞(腹痛や感染の原因になる)や、炎症の波及による胆汁うっ滞などがあります。これらに対して、内視鏡や腹部超音波を用いてチューブを嚢胞や胆管に通す治療を行っています。


胆嚢がん、胆管がん、膵臓がん
胆道(胆嚢や胆管)、膵臓のがんは早期発見が難しく、見つかった時にはすでに進行している状態であることも少なくありません。当科ではできるだけ早期に診断できるよう腹部超音波や超音波内視鏡、CT、MRIなどの各種検査を駆使するとともに、病状に応じて適切な治療を行うようにしています。外科や放射線科と連携して、手術や化学療法(抗がん剤治療)、放射線療法などを行っています。また、痛みや黄疸などの症状に応じて、薬物治療や内視鏡治療を積極的に行い、なるべく症状を小さくすることを目指します。


胃・十二指腸潰瘍
胃・十二指腸潰瘍は一般的にかかる人が多い病気であり、有効な薬が開発されているため、多くは薬剤で治癒が可能です。出血が伴うような出血性潰瘍に対しては内視鏡的止血術を行います。また、ピロリ菌の除菌により再発率が大幅に低下するため、1週間の内服治療による除菌治療を実施し、おおよそ8割以上の人でピロリ菌を除菌することが可能となっています。


食道・胃静脈瘤治療
当科では静脈瘤に対して静脈瘤結紮術(EVL)、硬化療法(EIS)、アルゴンプラズマ凝固法などの内視鏡を用いた治療を積極的に行っています。出血した時に止血目的で治療することや、静脈瘤自体を治すために治療することがあります。胃静脈瘤に対しては、首や足の血管からカテーテルを入れて静脈瘤をつぶす経静脈的静脈瘤塞栓術という治療を行う場合もあり、良好な結果を得ています。


ポリープ治療
胃や大腸のポリープに対して、必要であればポリペクトミー、粘膜切除術(EMR)等の内視鏡治療を行っています。早期胃がんや早期大腸がんの一部でも同様の内視鏡治療が可能となっています。これらの治療は通常の胃カメラ、大腸カメラを用いて病変を切除するものであり、胃や大腸の一部を切り取ることはありませんので、体への負担が少ないといえます。


潰瘍性大腸炎
治療の主体は薬物療法です。使用される薬はステロイドや過剰な免疫作用を抑える薬を使います。それぞれの症状や副作用の有無などをみながら治療を進めます。普段の過ごし方については症状が落ち着いている際には食事も自由に食べることが可能ですので、あまり神経質に考え過ぎないことが大切です。気にしすぎることによってストレスがかかり、症状悪化につなげないことに注意しましょう。


クローン病
食事療法、薬物療法を主として行います。炎症による腸の内部の狭窄や穿孔などが起きた際には手術や内視鏡治療も検討します。強い症状がある際にはステロイドや過剰な免疫作用を抑える薬を使いますが、症状が再発を繰り返すことも多いため、予防するための内服も必要です。

体制

名前 菊池 保治
役職 消化器内科科長
(兼)健康管理科部長
専門分野・資格 日本内科学会総合内科専門医・指導医
日本消化器病学会専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
日本肝臓学会肝臓専門医
日本人間ドック学会認定医
名前 久保田 教生
役職 部長
専門分野・資格 日本内科学会総合内科専門医・指導医
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
日本肝臓学会肝臓専門医・暫定指導医
臨床研修指導医
緩和ケア研修終了
名前 中川 彰彦
役職 医長
(兼)栄養管理科部長
専門分野・資格 医学博士
臨床研修指導医
緩和ケア研修終了
名前 藤田 尚人
役職 医長
名前 金城 佳緒里
役職 医員
名前 杉村 薫
役職 医員
名前 増田 有亮
役職 医員
名前 上向 伸太郎
役職 医師
名前 吉田 匡克
役職 医師
名前 片平 博之
役職 医師
名前 金澤 正治
役職 医師
名前 篠﨑 正美
役職 医師
専門分野・資格 肝・胆・膵の画像診断・治療
ラジオ波焼灼療法
B・C型肝炎の治療
日本内科学会認定内科医・指導医
日本消化器病学会専門医・指導医
臨床研修指導医
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